「空想都市『中村市』に珍スポットをつくろう!」の感想をいただきました

5月21日(日)神保町にて、観光会社「別視点」さんと共催させていただいた「空想都市『中村市』に珍スポットをつくろう!」の感想をいただきました。

書いてくださったのは慶應義塾大学大学院でシステムデザインの研究をされている学生のサカタさん。

ありがとうございます!
以下、写真や補足を加えながら引用させていただきます。


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今日は、とても濃くてとても長くて、たぶん完読する人の少ない…逆にいうと、完読してくれた方々とはめっちゃ仲良くなれそうな、そんなお話を。

5/21(土)、EDITORY神保町にて開催された「空想都市『中村市』に珍スポットをつくろう!」というワークショップ(WS)に参加して参りました。

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このWSは、東京を始めさまざまな地域の珍スポットを見つけ出し、それらを巡るツアーを行なっている観光会社「別視点」の松澤茂信さんと、7歳の頃から架空の都市「中村(なごむる)市」の地図をつくっている「地理人」の今和泉隆行さん、そして神保町でフリーペーパーを展開している「じじ神保町」のコラボレーション企画。12歳の頃から空想地図を(実は)つくっていたサカタ(筆者)は、大学時代のサークル仲間のまきちゃんの紹介で知り合った、「じじ神保町」のふゆちゃんこと茶谷ムジ女史からこの企画を聞いて、居ても立ってもいられず参加に至ったわけでございます。

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WSはふゆちゃんの「じじ神保町」の紹介からスタート。「じじ神保町」は、古本やカレーだけではない、新たな神保町のイメージを模索しており、最新号ではなんと新潟県三条市にまで取材に行ったのだとか。フリーペーパーの枠を越えた活動にビックリです。

続いては「地理人」の今和泉さんと「別視点」の松澤さんのトークセッション。

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架空都市の地図でタモリ倶楽部にも出演したことのある今和泉さんの「地図はまちの目次のようなもの」という言葉は、なかなかに言い得て妙だな〜と思いました。(サカタを含め)地図マニアにとって、地図はその土地の気候・風土・経済・産業・歴史・文化の表象であって、地図が土地の物語を語りかけてくれると言っても過言ではないのです。

また、珍スポットを何千箇所も巡っている松澤さんによる、珍スポットの4類型も非常に興味深かったですね。
松澤さんによると、珍スポットは

・マニアタイプ
・異業種組み合わせタイプ
・思想だだもれタイプ
・時の流れに仁王立ちタイプ
・いびつなおじさんタイプ

の4類型に分類されるのだとか。

例えば、人面石ばかりを集めた珍石館など、興味のギャップの感じられるスポットは「マニアタイプ」に、お坊さんがいる「坊主バー」などの、組み合わせのギャップのあるスポットは「異業種組み合わせタイプ」に分類されるそうで、その他にも創業者の意思のつまった犬山市の「お菓子の城」などは思想のギャップが見られる「思想だだもれタイプ」に、昭和のレジャーブームを色濃く残す「養老ランド」は時代とのギャップを感じられる「時の流れに仁王立ちタイプ」に、不思議なこだわりを持ったおじさんが経営している新橋の「かがや」(ここは説明しにくいけどとても行ってみたい)などは人間性とのギャップを感じられる「いびつなおじさんタイプ」に分類されるのだそうです。

今和泉さん・松澤さんのディープさ溢れるトークで虚構と現実の境目が曖昧になってきたところで、WSは「空想地図を、珍スポット目線で読み解いてみよう!」のコーナーへ。
5名グループに配られた空想地図の一部とお題を元に、どんな珍スポットがあるかを考えるという試みに挑むことになりました。

サカタのいたグループに配られた地図は、中村市の北部、大都市西京市と大楽川を隔てて接する中洲の街、北区の堀水野(ほりみの)のもの。

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そしてお題は
「北区を流れる大楽川沿いは、広い河川敷があり、人の背丈を超えるボーボーの地帯が数多くあります。人から見えないのをいいことに、草むらの中には謎のスポットが誕生しています。さて、誰がどんなことをしているでしょう。」
という、なかなか考え甲斐のあるお題でした。
グループで話しながら、始めに出てきたのは野◯◯スポットと××本の自動販売機群(どっちも下ネタw)。でも、そこから「匿名性の高い場所だよね」という発想が出てきて、「捨てられたペットの生態系が育まれているんじゃないか?」とか、「ペットの世話をしようとする怪しいオジサンがいるんじゃないか?」といった方向に話が発展(あ、ハッテンといえばそもそも例示がアレな感じだった)して、最終的には人間と動物の新文明が生まれつつある珍スポットがあるんだ、という結論に至りました。

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(ここまで読んでくれた皆さん、ついて来れているでしょうか…笑)


WSのシメは、「空想都市に珍スポットをつくってみよう!」。松澤さん・今和泉さん曰く「フリースタイル」の部門ということで、一つ前と同じ地区で珍スポットを考えてみようというコーナーでした。


サカタのグループでも個人ごとに色んな珍スポットが生まれましたが、最終的に発表した珍スポットは


「隣町のご当地ゆるキャラのシールが貼っては剥がされるシール工場跡地のトタンの壁」

地図を読み解いた結果、堀水野地区は中村市に所属しているものの、南北を流れる大楽川によって中心部との繋がりが分断されており、さらに隣の西京市のほうがアクセスしやすいというジレンマを抱えた地域だということに気づき、そこから話が広がっていきました。そして生まれたストーリーがこちら。

「堀水野には、西京市民になりたいけどなり切れない人や中村市民として疎外感を感じている人たちが住んでいる一方で、小学生からシールおじさんと呼ばれている怪しいおじさんなど、堀水野そのものに強いアイデンティティを持っている人もいます。堀水野のシール工場の跡地には、西京市派が貼ったと見られる西京市のご当地キャラクターのシールが怪しい笑顔を浮かべているものの、時々堀水野のご当地キャラクター『ほりみん』のシールに貼り替えられることがあります。おそらく(というかほぼ間違いなく)、シールおじさんの仕業なのではないか…という噂が、まことにしやかに伝えられているのです…」

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他のチームからも、栄森地区「美大生のいたずらが生み出した心霊スポット」

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美大生のいたずらが生み出した心霊スポット。牛山団地の屋上に少女が立っているという噂話があるが、実はもともと西京美術大学の演劇部や大道芸サークルの練習をしていたのが発端。徐々に話がエスカレートして生まれた珍スポット。・・・聞いていた地理人さん「じつは・・、私もその話聞いたことあります。ビックリした。。」というコメントに会場が湧きました。


平川地区「風俗街化をきらう住民が作った電波物件」、「地域の偉人『沢治二郎(さわおさむじろう)』の11mの鉄像」

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沢治二郎(〜1902)歌人。当時にしては珍しい180cmの長身で、震災復興の為に建てられた沢治二郎の鉄像が11mと巨大なのはそのことに由来している。普段は沢の自宅跡にある科学館に保管されているが、5月21日は墓があり、沢の愛人の住まいであった往心寺に運ばれ、これが沢鉄祭りの由縁である。


「信号機をみるためだけの喫茶店『シグナル』」「文学青年になりたかった店主がつくりあげた中華料理屋『大楽書房』」など、一言ではとても説明できない、愉快で怪しくて少し切ない珍スポットが生まれ、WSは盛会のうちに幕を閉じました。

 

さて、ここからが大事なところです。笑

ここ最近のサカタは、地域の人たちが、自分たち同士で地域を遊ぶための、地域の遊び方を生み出すWSを設計したいと考え、日々研究を重ねています。
今回のWSに参加したのも、こうした研究に生かせるヒントがあるかも知れないと思ったから。そしてその予感は、見事に的中しました。

まず思ったのは、このWSにはまちづくりWSのコペルニクス的転回的な側面があるぞということ。
最近、日本各地で行われているまちづくりのWSは、当然ながら実際に存在する「まち」の、実際に存在する地域資源をベースにして、それらをどう生かすかという方向に設計されることが多いように思います。
しかし、このWSでは、実際には存在しない「中村市」の、実際には存在しない地域資源をベースに妄想を膨らませるという真逆のアプローチを取っているのです。これはまさに、天動説と地動説になぞらえるべき、まちづくりWSのコペルニクス的転回といっていいのではないかと思うのです。

そして、このような真逆のアプローチだからこそ感じたのが、このWSは良い意味で、既存のまちづくりWSに対する痛烈で痛快なアンチテーゼを示してくれているのではないかということ。
特にそのことを感じたのは、WSの途中に今和泉さんが「このまちの人はみんなポジティブなんですね」とポロっと話した瞬間。「言われてみれば、今までのまちづくりWSでは不自然にやたらポジティブな住民が想定されることが多かったかも知れない…」「もしかしたら、『まちづくりバイアス』と言えるような思想の偏りがあるのかも知れない…」と、ギクッとしました。

一方で、このWSの凄まじい強みだと思ったのは、風俗街の話や××本の自販機の話といったまちと性の関わりや、地域住民の微妙な対立・アイデンティティのジレンマといった、既存のまちづくりWSでは極めて扱いづらいテーマにも軽々と踏み込めるということ。なにせ誰も住民ではないし、誰もしがらみがないし、誰も行ったこともないし、そもそも存在しないまちなのだから。(笑) 
さらに、存在しないまちを妄想しながら話すことで、WSの参加者の潜在意識にある「まち」の思い出や理想がどんどん言葉になっているように感じて、これは実際のまちづくりWSでも使えるかも知れないと思いました。

そして何より痛感したのは、「まち」はストーリーを共有しあうことで存在をし始めるということ。今回のWSは午後の3時間1回きりでしたが、3時間とことん中村市の珍スポットについて妄想したり話したりした結果、サカタを含め会場にいた全員の頭の中に、「中村市」が存在をし始めたように思います。
WSの終わりに今和泉さんが「中村市って、意外と捨てたもんじゃないんですね」と印象的な言葉を残していましたが、実際の「まち」に対するポジティブな意識も、ストーリーを共有し合うことで醸成されるのかも知れないと思いました。

また、珍スポット的な視点をもつことで、「まち」の見方は格段に増えるということも実感しました。珍スポットには珍スポットと言われるだけのストーリーや背景、土地や人との因果関係があることを知っていると、「まち」の風景の見え方は全く変わってきます。実際、帰りに歩く神保町の街並みは、行きとは全く違うもののように見えました。「もしかしたら、自分の身近な場所にも珍スポットと言える場所が、案外沢山あるかも知れない。」今は、そんな思いを強く抱いています。

何だか色んな思いがありすぎて、うまく纏めきれませんが…とにかく、このWSのおかげで、サカタは背中を押してもらったような気持ちになりました。

世の中には意識高い系から真面目系まで色んなまちづくりがあって、さらに色んなWSがあります。でも、サカタはサブカル的な「まち」の面白さ、楽しさを追求できるまちづくり、WSのあり方を探っていきたいと考えています。なぜなら、それが「まち」を愛したり、自分ごとのように捉えたりする上で、一番広い間口を示せると思うからです。

まだまだ出来ること、沢山ありそうだぞ。
本当に大きな刺激になった、すごいWSでした。

あ、忘れてはいけない。ふゆちゃんのファシリテーション能力も本当に凄かった。さすが様々なイベントを実現しているだけあって、タイムマネジメントも的を射たコメントも完璧だった。いつか自分も、そんなファシリテーターになりたいな。また頑張ろう。

しかし中村市、いつか行けたらいいのにな…。

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都市マネジメントの研究されている方からの真面目な感想嬉しい。サカタさん、ありがとうございます!

 


今まで普通だったものが視点の増えることによって普通でなくなる体験をみなさんと共有したいと思って企画した本イベント。参加者の方々の地図を読み解く力や視点を組み合わせる力がこちらの想像以上で、驚くとともに本当にたのしい3時間でした。一緒にイベントをつくってくださった参加者のみなさま、ありがとうございます!

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そして、共催してくださった観光会社「別視点」の松澤さん、WSの途中で空想のサウナスポットを発案してくださった同じく「別視点」観光カメラマンの齋藤さん、会場のEDITORY神保町さん、そしてそして空想地図「中村市」を7歳から描き続けてきてくださった地理人さん!ありがとうございました・・・!
 
もっと「まち」を、いろんな方向から見てみるゾ。